空き家再生事例
Vacation House 朔
|海街さんぽ道|
オーナー
大阪府在住 A様(50代・女性)

空き家の状況
築年数:29年
物件のイメージは古民家ともいえず、時代遅れな印象でした。
相続した年
2023年
当初の予定
空き家バンクに掲載していましたが、売却も賃貸もつながりませんでした。
空き家からホテルになるまで
Vacation House 朔の始まり

忙しい毎日に疲れて息が詰まる。
そんな毎日をそっと横に置いて自分の時間を過ごせたら、気持ちに変化があるかもしれない。
ここに訪れることで張り詰めた心をリセット出来る場所になりますように。
空き家を改装して誕生したホテルの名前は「朔」。
月の周期の始まり、新月を意味します。
ホテルのオープン日は2025年3月10日、新月の日。
朔の物語はここから始まります。
出会いから紹介、
つながりから生まれた新しい可能性

Aさんは2023年に今の奈半利の物件を相続。当初は賃貸での運用を検討していました。
しかし、賃貸では親族が大切に使っていた建物、骨董品を大切に扱ってもらえるのかどうか、不安があり二の足を踏んでいました。
色々と情報収集をしていく中で”きんつぎ”の代表森田との出会いがありました。丁寧に話を重ね、見積もりを納得いくまで書き直したり・・・森田はAさんの考えを尊重しながらアイデアを出し、経営への不安も向き合いました。
約1ヶ月半の打ち合わせの末、Aさんはホテル経営の決断をしました。
「旅する時間でリトリート」
高知市の宿泊施設が出来ないことをする

ホテルを稼働させるために一番こだわったのは、「旅時間の過ごし方」。どうしても高知市内の観光資源の量や、ビジネスホテルのおもてなしには敵いません。
奈半利に、このホテルに行ったらどんな気持ちになれるのか、どんな滞在時間を過ごせるのかを発信、お客様を導くことに重きを置きます。
Aさんはホテルに宿泊することで、「やらないといけないをしなくて良いという感覚」を持ってほしいと考えました。日々の家事、仕事、色んな喧噪から離れる。
英気を養う(=リトリートする)場所にするということを旅時間の過ごし方の軸に置きました。

「旅する時間でリトリート」を写真で表現する

こうして考えた軸を発信する手段として、大事な写真。
このホテルから何を発信できるか。
今流行の雰囲気を出せば「なんかいい感じ」は伝わりますが、それは一過性のもの。
元々の空き家の良さを生かしつつ、このホテルに行きたくなる理由が伝わる写真を模索しました。
”自分が自分でいられる時間。超我がままの在り方”

きんつぎの写真を手がける「design & photo IPRO」(アイプロ)の横畠さんが提案した写真のテーマ。
それは「他者の目を気にせずに自分が自分でいられる時間。超我がままの在り方」。
ホテルにいるときは日常を忘れてほしいと考えていたAさんと森田が納得する内容でした。

また、話し合いの中で、ホテルの設備ではなく、
「人物そのもの」「過ごし方」をメインで写真撮影することに決めました。
「奈半利で、このホテルで旅時間を過ごしたい」と
写真を見たお客様に想像してもらいかったためです。
こうして色んな想いが少しずつ形になっていきます。
更にどんな雰囲気で、どんな服で、どんな表情で写真を作り込んでいくかも決めていきました。
雰囲気はノスタルジック

雰囲気はノスタルジック。
奈半利に広がる昭和レトロな町並みを背景に、スマホのカメラでは出せない、フィルムカメラのような写真の色合いを引き出します。
また、ノスタルジックは温かさや優しさも表現できます。実家に帰ったかのような安心感とホテルのテーマである非日常。ノスタルジックはこれらをしっかり伝えられるとIPROさんは言います。
服装は”やりたいをやる”

服装は「やりたいをやる」。ホテルのテーマの自分らしさにつなげます。
旅だからって気張ったおしゃれじゃなく、いつもの格好でいるのも良い。レトロな奈半利の町並みに合わせて着物を買って行ってもすてき。80年代を想定させるようなハンチングにサスペンダーの格好もめっちゃいい。
ファッションを自分の心の赴くままに楽しむことが自分らしくいられる一歩につながります。
表情や動きは”無邪気でエネルギッシュ”
大人が全力で楽しむ姿。懐かしい気持ちで微笑む表情。奈半利に広がる青空や海、自然を掛け合わせることで、ホテルのテーマのリトリートを連想させます。
朔が考えるホテルのおもてなし
そうして2024年12月末、ホテルへの改装が完了しました。正面玄関には海を連想させるような濃紺の暖簾を。親族が大事にしていた骨董品も綺麗に展示。
和室も元々の良さを残し、古き良き温かさで宿泊客をお出迎えします。
逆に浴室や洗面台、お手洗いは「ストレスなく過ごしてほしかった」というこだわりで大きく手を加えました。




今後の展望について

今後の展望について、稼働率は初年度35%、2年目40%、3年目50%を目指していると教えてくれました。稼働率を上げるための今後の取り組みはコンテンツの拡充です。
森田はホテルのテーマである、英気を養う旅時間の過ごし方を具体化することを提案。コンテンツをサポートしてくれる仲間にも出会い、瞑想・ヨガ・写経などのモニターツアーを企画しているとのこと。
また、旅雑誌にはないような奈半利地元目線でのコンテンツ発信も進めています。マンボウのてんぷらが出てくるローカル居酒屋を紹介してはどうか、皿鉢のコラボはどうだろうか、なはリトリートという名前でマップを作ろうか・・・
地元で馴染みの場所が、輝き出します。

こうして、色んな人との出会いとつながりにより、家族の想いが詰まった家がホテルへと生まれ変わりました。”朔”は2024年に生まれたオーナーのお孫さんの名前。
親から子へ、子から孫へ。家族が生まれ育った家は月の周期のように時を重ね、新しい形となって再出発を迎えたばかりです。